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「虎の子も虎ということじゃ。信長のうつけは、芝居よ」
信長の父・信秀は、尾張の虎と呼ばれている。能ある鷹は爪を隠すが如く、信長はまさにそれだ。信友は信長を恐れていた。信秀がなにゆえ、うつけと悪評の信長に家督を譲ろうとするのか。もし信秀が信長の本性を見抜いているとしたら、信長は信秀に次ぐ信友の脅威となる。そしてその恐れは、現実となった。
睨みつけてくる信長の目が忘れられぬ。
それに怖じ、震えていた己がいた。
たかが、うつけと侮っていた虎の子に、守護代である自分が押された。
信友は歯軋りをしつつ、決意を新たにした。
「こうなれば、なんとしても信行に弾正忠家を継いで貰わねばならぬ。信長に、尾張は渡さぬ……!」
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