第七話 波乱を報せる北の風

4/8

14人が本棚に入れています
本棚に追加
/141ページ
「織田は、この稲葉山城に幾度も攻めてきたのですぞ!」 「もう決めたことだ。そなたが口を挟むことではない。義龍」  道三はそう言って、話を切り上げさせた。 「申し上げます」  その声に視線を上げると、障子の影に身を潜める忍び装束の女がいた。 「楓か、構わぬ。入れ」  楓は一礼すると、敷居の近くで改めて片膝をついた。 「殿――、国境に不穏な動きがみられまする」 「不穏な動き?」 「野盗の類かと思われますが、この時期に現れたのが気になりまする」  これに対し、これ幸いと義龍がまた吠えた。 「父上、やはり思った通りでございませんか!? 織田の罠です。我が美濃を狙っているのです! 父上」  義龍の言葉に、道三が彼を睥睨(へいげい)する。 「義龍。そなた――、いつからこの美濃の主となった?」 「ち、父上……っ」  道三に睨まれて、義龍の顔から血の気が引く。  確かに義龍は道三の嫡子である。だが『我が美濃』と自信たっぷりに言った言動が、道三は気に入らなかった。
/141ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加