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国は決して国主だけのものではない。元油売りの道三だからこそ、それがわかる。彼とて、好んで戦をしているわけでも、主君に仇なしたわけではない。
今や蝮と言われる彼にも、まもりたい物があった。この美濃の地に住む万民のため、国を豊かにするという夢を抱いた。
主君殺しと言われようが、それが彼のやり方である。
「下がれ、義龍」
「…………」
義龍は唇を噛み締め、広間から出ていった。
「楓、帰蝶はどうしておる?」
「お部屋に籠もっておりまする」
「アレが、男であれば――」
「殿……」
帰蝶は女なれど、男勝りの性格をしていた。
乗馬や弓、小太刀の使い方などを教えたのは道三自身だが、男に生まれていれば立派な武将となっていたであろう。
「そなたも大変よのう。帰蝶は普通の女子とは変わっているゆえ。しかも此度は蝮と虎の子が夫婦になる。さぞや、面白いことになるであろうの」
蝮と虎――、そういわれた道三と織田信秀、その子らが夫婦になる。
道三はまだ顔も知らぬ娘婿・信長に、ますます興味を抱くのであった。
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