第七話 波乱を報せる北の風

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「まさかと思いますが……、この件に関わってはいませんよね?」  恒興が声を控えめにして聞くと、信長は平然と答えた。  「仕方ないだろう。こいつらだって食って行かなければならん。ま、詳しくは聞くな」  確かに恐ろしい事実を聞かされそうで、恒興は追求するのを諦めた。 「吉法師の知り合いかい? そいつ」  恒興のことを聞かれ、信長は破顔した。 「まぁな。ところで、変わった話を聞かないか?」 「そう言やぁ、三日前から賊が国境を彷徨(うろつ)き始めたらしいぜ。戦の後ならともかく、あんなところにいたって何もねぇのに」 「賊、ねぇ……」  信長はふんっと鼻を鳴らすと、面白そうな顔をした。  戦のあと、よく行われたのが落ち武者狩りである。  落ち武者狩りとは、百姓が自分の村の自衛の一環として、敗戦により逃亡する落武者を探して略奪し、殺害した慣行である。武将の鎧や刀など装備を剥いで売ったり、金品など得たりしていた。   だがここ最近は、国境で戦は起きてはいない。 「信長さま」  信長の態度に嫌な予感がした恒興だが、信長はもうその気になっていた。 「面白い。久々に大暴れしてやるか」
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