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「まさかと思いますが……、この件に関わってはいませんよね?」
恒興が声を控えめにして聞くと、信長は平然と答えた。
「仕方ないだろう。こいつらだって食って行かなければならん。ま、詳しくは聞くな」
確かに恐ろしい事実を聞かされそうで、恒興は追求するのを諦めた。
「吉法師の知り合いかい? そいつ」
恒興のことを聞かれ、信長は破顔した。
「まぁな。ところで、変わった話を聞かないか?」
「そう言やぁ、三日前から賊が国境を彷徨き始めたらしいぜ。戦の後ならともかく、あんなところにいたって何もねぇのに」
「賊、ねぇ……」
信長はふんっと鼻を鳴らすと、面白そうな顔をした。
戦のあと、よく行われたのが落ち武者狩りである。
落ち武者狩りとは、百姓が自分の村の自衛の一環として、敗戦により逃亡する落武者を探して略奪し、殺害した慣行である。武将の鎧や刀など装備を剥いで売ったり、金品など得たりしていた。
だがここ最近は、国境で戦は起きてはいない。
「信長さま」
信長の態度に嫌な予感がした恒興だが、信長はもうその気になっていた。
「面白い。久々に大暴れしてやるか」
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