第八話 和睦なるか!? 信長と帰蝶の婚礼

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第八話 和睦なるか!? 信長と帰蝶の婚礼

 この日――、空は生憎(あいにく)曇天(どんてん)である。  織田信秀は織田木瓜紋を背に、上段の間にて一人、(さかずき)を傾けていた。  尾張の虎と言われ、織田弾正忠家を本家の守護代・織田大和家をも(しの)ぐほど大きくした男は、息子の晴れの日に何を想うのか。  尾張・末森城――、いつもなら重臣たちが顔を揃えるその広間はガランとしていた。  広間の前を通りかかった末森城織田家家臣・柴田勝家は、信秀の様子に眉を寄せた。  信秀に仕えて長い勝家だが、すべてがわかっているわけではない。 「殿はいったい、なにをお考えか」  そういったのは、林秀貞(はやしひでさだ)である。  林秀貞は弟の林通具とともに那古野城織田家家臣だが、信長の行いに最早ついていかれなくなったようだ。 「殿のお考えはもう決していよう」  自身も複雑な思いを抱えつつ、勝家はそう断じた。 「勝家どの」 「殿は間違いなく、弾正忠家を信長さまに譲られる」  場所を変えた上で勝家は、信秀が信長を後継者とする意思があると断定した。
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