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信秀は家督相続に関し、断言することはなかった。結果、それが混乱を招くことになったのだが、長子である信広は庶子ゆえに家督相続権から除外、となれば正室・土田御前の産んだ二男である信長が嫡子となる。
信秀も、信長の素行の悪さを知らぬはずがない。それなのに現在も黙っているということは、そういうことなのだろう。
だが、信長が家督を継ぐということは、勝家たちにとっても主君となる。
「あのうつけが、我らの主君となるですと!?」
秀貞は遠慮なく、声を荒らげた。
「口を慎まれよ。林どの」
「ありえぬ……、ありまえせぬぞ。お方さまも、信行さまを推されておられるというに」
信秀の正室であり、信長の母・土田御前は、信長を見限り、二番目の我が子・信行を推しているというのは勝家も知っている。
「だが、ことを荒立てのは今はやめておくのがよかろう。此度の和睦による婚姻の件は、殿の明らかなご意思。それを失敗させるようなことがあれば、腹を切るのは我ら」
勝家の言葉に、秀貞はそれ以上言い募ってくることはなかった。
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