第八話 和睦なるか!? 信長と帰蝶の婚礼

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 尾張・那古野城――、天文十八年二月二十四日、この日はいよいよ信長の婚礼である。  相手は美濃・斎藤道三の娘、帰蝶。道三と織田信秀が交わした和睦の条件として、二人の婚礼となった。だが、無事に済むまでは油断できないのがこの時代である。  和睦と見せかけて、攻めて来られてもおかしくはないのである。  本来ならば主君の婚礼を祝うべきだが、当の本人はもちろん、家臣たちは笑顔ではなかった。 「政秀……、いい加減にしろよ」  上段の間で、素襖(すおう)に身を包んだ信長は平手政秀を(にら)んでいた。  さすがにこの日は信長も正装だったが、顔は仏頂面である。 「なんと言われようとこの平手政秀、今日はお側を離れませぬ」 「まさか、(かわや)(※便所)まで付いてくるつもりか?」 「若、今日がどのような日がおわかりか?」 「ああ。(まむし)の娘が嫁いで来るんだろう? だからと、何故お前が朝から俺に張り付く?」 「放っておけば若のこと、また城を抜け出されます。お(いさ)めすべき者が頼りにならぬゆえ、こうして(それがし)めが見張っておりまする」
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