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突然政秀の視線が恒興に注がれ、話が振られると思っていなかった恒興は素っ頓狂な声を上げた。
「は……?」
「は? ではない! 恒興。そなた何年、若の側にいるのじゃ!」
「申し訳ございませぬ」
頭を下げるも、信長の脱走には毎回つきあわされるので、もはや諦めている恒興である。
「勝三郎を責めるな、爺」
「若、今後は何卒、身を慎まれますようお願い申し上げまする」
「申し上げます!」
廊に控えた小者に、その場にいた皆の視線が向く。
「何事じゃ!?」
「あ……」
政秀を視界に捉えた小者は、彼がいると思っていなかったらしい。
「構わん。申せ」
信長の命に、小者は告げた。
「国境の木曽川近辺にて、賊と見られる者に早瀬さま数名が襲われたとの報せ」
「数は?」
「確認できただけで十数名――」
いかん……、美濃から輿が……」
政秀の声が震えている。しかし彼を更に驚かせたのは――。
「勝三郎、馬の用意だ。それと信盛と成政も呼べ!」
正装を解き始めた信長に、政秀の表情が引きつる。
「若っ!」
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