第八話 和睦なるか!? 信長と帰蝶の婚礼

4/9
前へ
/141ページ
次へ
 突然政秀の視線が恒興に注がれ、話が振られると思っていなかった恒興は()頓狂(とんきよう)な声を上げた。 「は……?」 「は? ではない! 恒興。そなた何年、若の側にいるのじゃ!」 「申し訳ございませぬ」  頭を下げるも、信長の脱走には毎回つきあわされるので、もはや諦めている恒興である。 「勝三郎を責めるな、爺」 「若、今後は何卒(なにとぞ)、身を(つつし)まれますようお願い申し上げまする」 「申し上げます!」  廊に控えた小者に、その場にいた皆の視線が向く。 「何事じゃ!?」 「あ……」  政秀を視界に捉えた小者は、彼がいると思っていなかったらしい。 「構わん。申せ」  信長の命に、小者は告げた。 「国境(くにざかい)の木曽川近辺にて、賊と見られる者に早瀬さま数名が襲われたとの報せ」 「数は?」 「確認できただけで十数名――」   いかん……、美濃から輿(こし)が……」  政秀の声が震えている。しかし彼を更に驚かせたのは――。 「勝三郎、馬の用意だ。それと信盛(のぶもり)成政(なりまさ)も呼べ!」  正装を解き始めた信長に、政秀の表情が引きつる。 「若っ!」
/141ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加