第八話 和睦なるか!? 信長と帰蝶の婚礼

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 信盛と成政とは、那古野城織田家家臣・佐久間信盛(さくまのぶもり)佐々成政(さつさなりまさ)のことである。 「せっかくの和睦だ。壊れたくはないだろう。爺」  痛い所をつかれ、政秀は信長を制するのを諦めたのであった。   「信長さま、なにゆえ賊は織田家の家臣を襲ったのでございましょう?」  馬屋に向かう道すがら、恒興は眉を寄せた。  国境にいた織田家家臣は、美濃からやってくる輿入れを迎える者たちだったが、その者たちを負かすとはよほどの手練(てだれ)と見える。 「奴らの目的は、織田じゃない」  信長は馬に跨がると、そうきっぱり言い切った。 「と言いますと?」 「どうしてこの時期に、国境に賊が集まり出したのかやっとわかった。誰かが、美濃からの輿入れを賊に教えたんだ。つまり狙いは……」 「まさか――」  恒興にも、ようやくわかった。  賊の狙いが、その輿入れにあると。 「信長さま、いったい何事にございますか?」  血相を変えてやってきた佐久間信盛、佐々成政が馬上の信長を見上げる。 「左様。我らを召すなど……」  信盛に続いて、成政が口を開く。 「これから美濃との国境に向かう」
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