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第九話 帰蝶の危機! 決死の木曽川越え
美濃と尾張との間には、大河が悠々と横たわっている。
信濃国・鉢盛山を水源とし、渓谷を縫うが如く流れて伊勢湾に注ぐという木曽川である。
そんな木曽川の本流だが、春の雪解けのころから増水し始めるという。
幹川の揖斐川や長良川はそれほど長い川ではないというが、上流に大雨が降ると忽ち増水、特に長良川は上流の飛騨山地の水を一気に下流に流すため「暴れ川」と呼ばれているという。
そんな木曽川を目前にして、美濃からの一行は足止めされていた。
足止めをしてきたのは、雑兵のような身なりの男数名。
尾張・織田弾正忠家当主、織田信秀と、美濃・斎藤道三との間に結ばれることになる和睦のため、道三の娘・帰蝶は信秀の第二子・信長に嫁ぐことになった。
それがこの日である。
「大人しく、我々と来ていただこうか? 姫よ」
従わねば力ずくで連れて行くと言いたげな男たちの態度に、護衛の稲葉良通らは腰の刀に手を掛けた。
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