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第十話 宿敵! 今川義元
天文十八年三月――、那古野城城郭から外へ伸びる梅の枝が小さな蕾をつけた。
雪を抱いていた尾張三山も、まもなく雪解けとなるだろう。
ただ一見平穏に見える尾張だが、内にも外にも火種は燻っており、今川勢が侵攻を開始したという報せが届いた。
――合戦の日が近い。
池田勝三郎恒興は歩む廊の途中で足を止め、口を引き結ぶ。
駿河の今川義元は、尾張にとって宿敵である。
信長の父にして織田弾正忠家当主・織田信秀の頃から対戦、本当の勝敗はどちらかが首を取られ、国が制圧されたときだろう。
この日――、三河・安祥城から信長を訪ねてきた人物がいる。
信長の異母兄、織田信広である。
なんでも安祥城近くまで、今川勢が侵攻してきたらしい。
安祥城は元は三河国・松平氏の城だったが、天文九年に信秀が安祥城を攻撃し落城させ、このときに信広は安祥城城代(※城の管理・守衛をさせた者)となったらしい。
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