第十一話 前田犬千代、推参!

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 家臣といえど二心(ふたごころ)あれば、明日には敵となる。  疑心暗鬼にならざるを得ないのが、弱肉強食の戦国の世である。  裏切られるくらいなら――。  背を向ける家臣たちを幼くして見てきた彼は、真にこの尾張を想い、共に戦う者を求め続けた。  はたして、自分の側に何人残るだろうか。 「馬番でもなんでもしますから!」  突然聞こえてきた声に、信長の二の矢が逸れる。 「――何事だ……?」 「さぁ……?」  お互い眉を寄せ、二人は振り返った。                    ◆ 「しつこいぞ! 小僧」  那古野城虎口(なごのじようこぐち)(※城の出入り口)にて、少年は城に入るのを城番(じようばん)(※城の守衛にあたった兵士)に拒まれた。  召し抱えてもらおうとやってきたのだが、文字通りの門前払いである。 「そう言わず、殿さまに取り次いでくれよ! 父上も織田家家臣なのに、なんで俺はだめなんだ?」  若すぎるのがいけないのかと思ったが、そうでもないらしい。  父が織田家家臣なのは本当だが。 「戯言(ざれごと)を申すな!」
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