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一先ず僕の家じゃ飼えない。賃貸住宅だから。それに母親が猫アレルギー。二重苦。
そうなると僕のコミュニティを使う。それは疎遠になりそうな友人たち。僕は仔猫の写真を撮ってスマホのメッセージアプリでグループに流す。
返信なんて直ぐにはない。リアクションはあっても良いだろうに。僕とはもうこんな話も付き合えないんだろうか。
益々僕は落ち込みが深くなる。こんな思いを誰に伝えたら良いんだろう。その時に「にゃん」と声が聞こえる。
「お前が話を聞いてくれるってか」
クスリと笑わせてくれた。街の小さな公園のベンチに仔猫と僕。居るのは月くらい。話し相手には丁度良いのかもしれない。
「高校。どうしたら良いんだろうな。わからないよ。元々友達が進むから選んだのに」
僕の話を聞いているのか仔猫が首を傾げながら見つめている。
「友達だって居なくなると、寂しいよ。折角今まで一緒だったのに」
膝からお腹のほうへ仔猫はよじ登ろうとしている。
「彼女にだって想いくらい伝えれば良かったのに」
また涙が流れて仔猫の額に落ちる。
不思議そうな仔猫が月明りの涙に腕を伸ばしていた。
どんなに僕が弱音を吐いても仔猫は遊ぶように僕のことを見ている。今のこの子には僕しか頼れるものは居ないだろうから。
静かな時間に仔猫の鳴き声が聞こえる。なんとなくそれで癒されてしまう僕の心は割れたガラス玉。
「泣いてたってしょうがないのはわかってるんだよ」
仔猫はやっとのことで僕の顔近くまで登って、手で顔を叩く。弱々しくてもそれは優しさみたいに思える。今日の月の灯みたいに。
涙を拭った僕が気が付いたのは着信音を消していたスマホが振動していること。それは友人たちからのメッセージだ。
「親が動物は飼うなって」「うちは賃貸だしな」「うちの犬が猫嫌いで」
全敗だ。仔猫に申し訳ない。僕のコミュニティなんてこんなもんだから。
「ありがとう。悪かった。ほかを探すよ」
返してくれた友達たちに僕は俺のメッセージを送る。
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