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「ダメだ。僕なんて所詮こんなもんなんだ」
足は思う通りに進まない。新しくなんてなってない。単に元通りに友達が優しかっただけ。勉強を頑張ろうと思っても、それは単におもっただけ。彼女のことだって忘れようと思っただけ。全て違わない僕なんだ。
落ちてしまう。恋心がまだあるのだって悪いわけじゃないとわかってるのに、彼女をまだ全然好きだということを恨めしくも思える。どうしたらいいのだろう。
膝をついてしまった僕に、仔猫が「にゃお」と鳴く。こんな僕に優しい声を聞かせてる。
もうどうすることもできない。この子は友人たちの頑張りを待つことにしよう。勉強は普通通りに頑張るけど、ダメだったら学校のランクを落とそう。彼女への片想いも続けてしまおう。
全てを諦めた僕の心は軽くなる。月は今日だけじゃないいつだって同じように輝いている。それがちょっと寂し気。
「帰ろうか」
そうこの仔猫を今日は僕の家に連れ帰るようにしようと思い。また明るい街を眺める。僕の帰る道もそっちだ。単に紛れ込むだけなら重い心もない。普通に公園から離れる。
「ごめんなさい」
その時に人にぶつかりそうになって全く元通り弱っちい僕は相手の顔も見ないで詫びて逃げようとする。
「ちょっと待って。その子、メッセージで回ってた仔猫でしょ?」
振り返ったそこに居たのは僕の憧れの彼女だ。そんな人が僕に向かってニコニコとしている。違う仔猫に向けているんだろう。
「そうだよ。飼い主が見つからなくて」
「私が飼いたい。家族に了解とって、返事をしようと思ってたところなんだ」
そう言うとスマホのメッセージアプリの画面を見せている。どうやら本当に彼女は仔猫を飼いたいらしい。これは嬉しい。
「そうなんだ。ありがとう。困ってたんだ」
「ふーん。君に拾われたんだ。この子は運が良いね」
今度は明らかに僕の顔に向かって笑顔を見せてくれた。その笑顔を見てると、僕の想いを伝えたくてしょうがない。その時に仔猫が僕のホッペタを叩く。そんなことにも彼女は愛らしく笑っている。
「僕は君のことが好きなんだ」
言えないと思っていた言葉なのに彼女の表情を見ていると呟いていた。
「えっと、それって告白?」
ちょっと困った彼女の表情がある。でもちょっと笑っている。それは華やかに。
「忘れてね」
困り照れたから僕は取り繕うように話してもそれから嬉しいことが続く。
おわり
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