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週明け、出社をすると一番に聡美が声を掛けてきた。
「こないだはどーも」
「こちらこそ。でもびっくりしちゃった」
「これで私も安心だわ。なかなか結婚の話が出ないっていうから、煮え切らない男だと思ってたのよ。でも
先輩は一途だから、きっと幸せにしてもらえるわよ」
手厳しい同僚に太鼓判を押され、安心して前に進める。
「侑斗は昔から一途なの?」
「私が知ってる限りは、1人の女性を愛し続けると思う。他の女に目移りするなんて、先輩に限ってはないんじゃないかなー?」
私より前から侑斗のことを知っている聡美の言葉に、気を良くしていたが…。
「えー、そんな人いますー?」
いつから聞いていたのか、菜々が話に割り込んできた。
まだ始業前なので「男なんて浮気する生き物じゃないですー?」と宣(のまた)う後輩を咎めることができない。
「私がこれまで生きてきた中で、裏切らない男なんて一人も居ませんでしたよ?本気にさえならなければ、適当に放し飼いにしといたほうが良くないですか?」
あまりの衝撃発言に、言葉が詰まってしまう。
菜々の言うことが本当なら、随分と軽薄な人間関係の中で生きてきたわけだし、そもそも『放し飼い』にするような考えの人には、それに似た類の輩しか寄ってこないだろう。
単に年代の差なのか、淡白な性格なのか…?
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