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…遅いわね?
なにかトラブルかしら?
そういえばトイレに行く前、なんだか顔色が良くなかった。
もしかしたら、具合が悪くて倒れてるんじゃ?
私は立ち上がると、小走りで男子トイレに向かう。
さっと確認したが、どうやら中には居ないようだ。
「どうしたのかしら?」
首を傾げつつ戻ると、その途中でピンク色の…ハンカチ落ちていた。
可愛らしい、変身もののキャラクターが描かれている。
子どもが落としたのだろう。
店員に届けようと思ったが「それ、私の!」と、女の子がこちらを真っ直ぐ指差す。
ハンカチを渡してあげると、にっこりと笑う。
「私、誕生日なの!」
「えっ、そうなの?お姉ちゃんも誕生日なのよ?」
「ホントにー!?」
屈託なく喜んでいる姿が、愛くるしいではないか。
私の手を取ると、そのまま力強く引っ張っていく。
「香織の席、眺めがいいんだよー!」
名前は『香織』というらしい。
「ママと来たんだけど、さっきパパも来てくれたの。でもまだお仕事みたい。だから香織は終わるまでおとなしく待つんだー!」
テラス席に案内されたが、テーブルには誰もいなかった。
「あれ、居ない?」
「香織ちゃんのこと探してるんじゃない?」
「そうかなぁー?あっ、来た!」
私はゆっくりと振り返る──。
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