【素敵なブライダル】

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「香織…どこ行ってたの?探したのよ?」 どうやら母親らしい女性は、そう言って私のほうをうかがう。 「お姉ちゃんも誕生日なんだって!」 まだ私と手を繋いだままの香織が、奇妙な偶然を報告する。 「あら、そうなんですね。それでこの子ったら、ごめんなさい」 「いえそんな、私もなんだか楽しくて」 「お誕生日おめでとうございます」 微笑んで軽く頭を下げる所作からは、品の良さが垣間見える。 「香織ちゃんも、おめでとう」 私も祝いの言葉を贈ったが、当人の関心は他のところにあった。 「パパはー?」 「まだお仕事が残ってるから帰ったわ。そんな顔しないの、明日またお祝いしてもらうでしょ?」 「いいね、明日はパパを独り占めにできるね」 「うん、遊園地に行くの!」 瞬時に元気になった香織とその母親と別れ、テーブルに戻る。 しかし、まだ侑斗の姿はない。 やっぱり何かあったんじゃ…? 連絡を取ろうとスマホを取り出すと、ちょうど侑斗からメッセージが届いていた。 気分が悪くなったので、先にお店を出たという。 私には最後までコースを楽しむよう書いてあるが、一人で食べても仕方がない。 それに、なにより侑斗のことが心配だ。 すぐに席を立って、退店することにした。 途中でテラス席を見やると、ご機嫌な香織の笑顔が目に入り、こちらまでつい笑顔になってしまう。
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