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「大丈夫なの?」
私は自ら運転しながら、助手席でぐったりしている侑斗に声を掛ける。
「本当に悪い。急に腹が痛くなってきて…外の空気を吸えば良くなるかと思って」
「病院には行かなくてもいいの?」
「もう治ったから。せっかくの誕生日なのに…」
「そんなこといいの。侑斗が私のためにお店を探して、予約してくれただけで満足だから」
そう言うと、侑斗が力なく笑う。
一気に老け込んだような疲労感が顔に滲み出ている。
少しでも元気づけようと、明るい話題に変えることにした。
「そういえばさっき、レストランで可愛らしい女の子に会って」
「…女の子?」
「上品なお母さんと誕生日のお祝いに来てて、パパは仕事だったのね。でも、どうやら合間を縫って駆けつけたらしいの。たとえ僅かの時間でも、誕生日当日に祝うなんて、いい父親よね?」
しかし、侑斗からの反応はない。
チラ見すると、きつく目を閉じていた。
そのまま口を閉じ、休ませてあげることにする。
数日前、淳司のことで知らなかった侑斗の一面が見えたが、あれはそれだけ愛されているという証拠だろう。
あんな家族がいいなぁ。
理想の未来像に出会った私は、侑斗との家庭を思い浮かべてみる。
今度あの店に行く時には、増えているかもしれない。
可愛らしい子どもが…。
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