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もちろん、私は別れたくない。
それどころか、二人で手を取り合って前に進みたいと思っている。
いや、願っているんだ。
でもそれって、一人だけじゃどうにもならないことであって──。
「三浦さん、女子トイレの蛍光灯が切れてるんだけど?あと冷房の効きが悪いからなんとかしてくれる?」
商品開発部のお局が『総務部』に首を突っ込み、私を名指しした。
「すみません、すぐに対処します」
にこやかに対応するから余計につけ込まれるんだろうけど、実際に自分の仕事なのだから仕方がない。
心の中で『何でも屋かよ』と愚痴るも、ここ『山内商事』は上場企業であり、入社してもう七年目になる。
様々な部署を経験したが、この総務部が在籍歴が最も長く、実際に自分に合っているとも思う。
営業したりプレゼンしたり、前にぐんぐん出るというよりも、縁の下の力持ちというか、裏方でいるほうが控えめな自分に合っているんだ。
ただ、配属したての『実質、ここが会社を回している』という淡い使命感は、もうカケラすら残っていないが。
発注やらデータ入力などの細々した仕事をこなし、伸びをした時だった。
「春香、お昼行かない?」
声を掛けてきたのは、同僚の遠藤聡美。
ちょうど相談したいこともあり、二つ返事で立ち上がる。
お手製のお弁当を持って。
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