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「付き合って何年だっけ?」
「二年とちょっと」
「結婚の話とか具体的に出てるの?」
そんな問いかけに、ここ最近の恋人との逢瀬を思い返す。
しかし、何も浮かんではこない。
「分かった、すぐに返事がないとてことは、そういうことよね?相手は年上だったよね?」
「うん、33歳のサラリーマン」
「仕事が忙しい男盛りか。匂わせたりもしてないの?こっそり式場のパンフレット置いておくとか」
「それって、あからさまじゃない?」
「まぁ、確かにね。でも春香のことだから、相手からのプロポーズを待ってるんでしょ?向こうにプレッシャーを与えたくないし、そんな浅ましい女だと思われたくもない」
「それは…」
はっきり答えられないのは、まさに図星だからだ。
30歳になるまでに結婚したい。
それは一つの夢でもあった。決して手が届かないわけじゃない、女の夢。
そして私は、王子様に巡り合ったんだ。
付き合いが始まり、仲が深まっていく。
この人と添い遂げたいと思う気持ちが大きくなっていくにつれ、タイムリミットが迫ってきていた。
まだ大丈夫、まだ大丈夫だと言い聞かせているうちに、気がつけばもう30の大台が目前。
それなのに『結婚』の『け』の字も浮かんでいない。
思い描いていた夢が、この手から離れようとしている。
このままじゃ…。
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