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「えっ、どういう…?」
「だから、先輩が結婚していることは黙ってます」
「ど、どうして?」
「理由なんかいります?それとも、知らない間に不倫してたって話しましょうか?罪の意識に耐えられないっていうなら、ここで修羅場を迎えるのもアリなんじゃ?」
「ま、待ってくれ!本当に、本当に春香に黙っててくれるのか?」
信じられない思いで尋ねると、聡美はしっかりと頷く。
「私からは何も言いませんから、どうぞお付き合いを続けて下さい」
「春香の友達じゃ…なかったのか?」
「友達の定義によりますけど、好きか嫌いかで言えば私、あの子のこと嫌いなんです。このまま素知らぬ顔をしてたほうが、面白いことになりそうだし。なにか力になれることがあれば協力するんで、連絡先を交換しましょ」
ウィンクする後輩を、唖然と見つめるしかない。
俺としては助かったのだが…。
「ごめんね、遅くなって」
春香が戻ってくると、すかさず聡美が話し出す。
「もう、惚気話ばっかり聞かされたわよ。先輩も、早く春香と結婚したいんだって」
「えっ、そんなこと言ったの?」
笑顔で問うてくるが、答えが喉に詰まって出てこなかった。
「言ってたわよ。私、2人はお似合いだと思うな」
「そうかな?」
「そうだよ!春香、幸せになって良かったね」
そんな聡美の言葉が、いつまでも耳から離れなかった…。
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