566人が本棚に入れています
本棚に追加
/327ページ
「それが、引っ越すらしいの。アパートの更新で家賃がかなり上がるらしくて。その電話。侑斗のことも訊いてたよ?デートだって言ったら、よろしくって」
「手伝いに行かなくていいのか?」
「大丈夫だよ、遠いし。多分…業者に頼むはずだから」
「そうか、ならいいけど」
「気にかけてくれてありがとう」
そう言って、改めて侑斗の存在を実感する。
この人とならきっと、共に人生を歩んでいくことができるはず。
その後、将来の夢を語り合って有意義な時間を過ごした。
結婚すれば、これが日常になるんだ。
幸せの余韻を感じながら寝る準備をしていると、スマホが鳴る。
もしかしたら侑斗かも?なんて思いつつ確認すると──。
『アッくん』
そう画面に表示されていた。
「あっ、もしもし?」
『春香?今いいか?』
昔からよく聞き慣れた、ぶっきら棒な声。
知らない人なら、怒っていると勘違いするだろう。
「いいけど?」
『お前、わざわざ帰って来なくていいから』
いきなりの『お前』呼ばわり。それに主語も何もあったもんじゃない。
でも私には、相手が何を言っているのか分かる。
それくらい、付き合いが長いんだ。
『俺が手伝うし、仕事仲間にも声を掛けたから心配すんなよ』
「うん、ありがとう」
私はお礼を言った。
幼馴染に。
最初のコメントを投稿しよう!