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黒田敦司(あつし)。
私と同い年の幼馴染とは家が隣同士で、いつも一緒に遊んでいた。気づけば当たり前のように横にいて、そして気づけば少しずつ距離が離れていったんだ。
思春期になると互いに意識してしまうのは、よくあること。
けれど、中学になったあたりから淳司はガラの悪い連中と付き合うようになり、あまり学校にも来なくなる。
ちょうど、母親が出て行った頃と時期が重なって…。
どうやら男と駆け落ち同然に居なくなったらしいということは、私の耳にも届いていた。
すでに父親が蒸発していた私はある日、バイクの轟音が聞こえた瞬間に、部屋を飛び出していたんだ。
言葉を交わすのは、いつ振りだろう?
「あっ…」
飛び出したはいいが、何を話すのかは考えていない。
言葉に詰まる私に「久しぶりだな」と言う淳司は、なんだか何も変わっていなくて、どこか拍子抜けしてしまう。
髪の毛はマッキンキンだし、私がよく遊んでいたアッくんではなかったけど、少し照れているのか、頭をかいている姿に面影は残っている。
「おばさん、元気か?」
「あっ、うん。おじさんは…?」
「あんまり話してないから分かんねー」
やや吐き捨てるようなら物言いなのは、淳司にも思うところがあるからか?
「私…アッくんの気持ち、少しは分かるから」
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