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「私もさ、お父さんがいきなり居なくなった時はびっくりしたし、寂しかったけど…なんかもう、今は思い出そうとしてもぼんやりするのは、そんなに考えなくなって、そうなっていくはずだし、そのうちどうでもよくなるっていうか…」
「春香さ、それってもしかして俺のこと励ましてる?」
「べ、別にそういうわけじゃないし」
「俺なら平気。大人には大人の事情が色々あんだろ?」
意外と達観している淳司は、とても大人びて見えた。
「あとお母さんがね、いつでもご飯とか食べに来いって」
「おばさんのカレー、マジで美味いもんな」
「そう?あれくらいなら私のほうが美味しいけど?」
「お前のバレンタインチョコ、くそ不味かったじゃないか」
「あれはたまたま失敗したの!」
昔のように笑い合うことができ、思い切って声を掛けたことが間違いじゃなかったと思ったんだ。
あのまま地元に残っていたら…淳司と付き合っていたかもしれない。
好意を感じていたし、私も淡い恋心を抱いていた時期もある。
母からの電話で、淳司に頼むようなことを聞いていたが、侑斗に問いかけられた時にはぐらかしてしまった。
特別な意味はない。
わざわざ言う必要がないと思っただけだ。
淳司にもちゃんと話さなくちゃ、私が結婚することを。
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