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だってそうでしょ?
『独身』だと言われれば、その言葉を信じるしかない。
というより、疑いもしないだろう。
それなのに実は『既婚者』で、知らない間に不倫していたなんて、受けた傷は相当なものじゃないか?
「マッチングアプリの話なんですけど、既婚者なら既婚者らしく、そっち系に登録すればいいのに、どうもモテないらしくって。慰謝料は女でも払わないといけないじゃないですか?今って、そういう情報は巷に溢れてるんで」
「どうやって相手が既婚者だって分かったのよ?」
聡美が尋ねたが、それは私も知りたいと思った。
「絶対に泊まらない、外でくっつかない、デートは決まってラブホ。なんかおかしいと思って、こっそりスマホをチェックしたら、家族の写真が出てきたんで。だから先輩も気をつけたほうがいいと思いますよー?」
「余計なお世話よ」
私の代わりに叩き斬ったのは、同僚でもあり友人の聡美だ。
「あんたの周りはそういう軽率な奴しか居ないんだろうけど、春香の相手は違うから。誠実さの塊みたいな人だから、ご心配なく」
「そうですか、どうぞお幸せに」
恭しく頭を下げる菜々を、私の代わりに聡美が睨みつけてくれる。
気持ちを汲み取ってくれる友がいることを、心から有り難いと思った。
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