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春香が、馬鹿でかい男と見つめ合っている──。
親しげに会話していたのは見ていたが、あれはなんだ?
別れ際、まるでこの世に二人だけしか存在していないとでもいうような、特別な空気感。決して他人には立ち入ることができない、熱いアイコンタクト。
俺の中で、何かが切れた。
「──春香?」
「あっ、侑斗」
「遅れて悪い。今、来たとこ?」
「えっ…あっ、そうなの。さっき来たばっかりだから待ってないよ」
そう言って微笑む春香に、奥歯を『ギリっ』と噛み締める。
付き合って初めて、春香に嘘を吐かれたんだ。
「どこに食べに行く?いつものところ?」
あの男はなんだ!?
「侑斗?仕事はどう?大きな契約が取れるかもって言ってたけど?」
俺に対しては従順で、他の男には見向きもしないと思っていたのに!
「ねぇ、侑斗っ!」
許さない…俺以外の男となんて許さないっ!
「不倫してるよね?」
気づけば、口から勝手に言葉が飛び出していた。
そうだ、これは立派な不倫。
俺に対しての裏切り行為以外の、なにものでもない。
「だって、俺と春香は結婚するんだろ?それなのに他の男と見つめ合うって、それって不倫以外になにがある?」
「それって…アッくんのこと?それなら違うの、私とアッくんはそんなんじゃないから」
『アッくん』だと?
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