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「電話して」
「えっ?」
「そいつに電話して、もう二度と会わないって言うんだ」
「ちょっと…本気?」
どうやら春香は、俺が冗談を言っていると思っているらしい。
「じゃ、春香は俺のことを愛してなんだな」
冷たく吐き捨てると、春香の顔が歪む。
なにを泣きそうな顔をしている?
深く傷ついたのは、この俺のほうだというのに!
こんなにも春香を愛しているし、悲しませないよう結婚の約束だっていたじゃないか?大切な家族がいるにも関わらず、なにより大切に思っているのに…。
ただの幼馴染だぁ?俺以外の男と見つめ合うなんて、言語道断、あってはならない!
「俺は心から春香を愛してる」
「それは私だって!」
「なら消して」
「消す?」
「連絡先、俺の目の前で消して。せめてそれくらいならできるだろ?俺はのことを本当に愛してるって言うなら、ちゃんと行動で示してよ」
まだ怒りがおさまらないので、物言いが刺々しくなってしまう。
それでも春香は「──分かった」と言うと、俺の前で『アッくん』を削除した。
ようやく、怒りがスーッと引いていく。
我ながらこんなに嫉妬深いとは驚きだったが、自分以外へと目を向ける春香がどうしても許せなかったんだ。
「こんなことさせて、ごめん。でも俺、愛してるから」
そう言って、強く春香のことを抱きしめた。
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