【ダブルバースディ】

3/13
前へ
/327ページ
次へ
「電話して」 「えっ?」 「そいつに電話して、もう二度と会わないって言うんだ」 「ちょっと…本気?」 どうやら春香は、俺が冗談を言っていると思っているらしい。 「じゃ、春香は俺のことを愛してなんだな」 冷たく吐き捨てると、春香の顔が歪む。 なにを泣きそうな顔をしている? 深く傷ついたのは、この俺のほうだというのに! こんなにも春香を愛しているし、悲しませないよう結婚の約束だっていたじゃないか?大切な家族がいるにも関わらず、なにより大切に思っているのに…。 ただの幼馴染だぁ?俺以外の男と見つめ合うなんて、言語道断、あってはならない! 「俺は心から春香を愛してる」 「それは私だって!」 「なら消して」 「消す?」 「連絡先、俺の目の前で消して。せめてそれくらいならできるだろ?俺はのことを本当に愛してるって言うなら、ちゃんと行動で示してよ」 まだ怒りがおさまらないので、物言いが刺々しくなってしまう。 それでも春香は「──分かった」と言うと、俺の前で『アッくん』を削除した。 ようやく、怒りがスーッと引いていく。 我ながらこんなに嫉妬深いとは驚きだったが、自分以外へと目を向ける春香がどうしても許せなかったんだ。 「こんなことさせて、ごめん。でも俺、愛してるから」 そう言って、強く春香のことを抱きしめた。
/327ページ

最初のコメントを投稿しよう!

649人が本棚に入れています
本棚に追加