【ダブルバースディ】

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「今週、香織の誕生日だから!」 朝の食卓で、愛娘が何度も何度も釘を刺してくる。 「ちゃんと分かってるって。土曜日だよな?」 「でも、その日は仕事なんでしょ?」 バターが香るクロワッサンをテーブルに置きながら、浩子が確認した。 「悪いな、大事な商談なんだ。その代わり、日曜日は空けてあるから」 「遊園地に行くんだからね!」 「あぁ、いっぱい遊ぼうな?」 約束すると、香織はテンションマックスで騒いでいる。 「早く食べなさい。じゃ、土曜日はママとお買い物にでも行こうか?パパは一日遅れだから、ママがその日にお祝いしてあげる」 どこか嫌味にも聞こえたが、触れないでおこう。 まだ子どもの香織にとって、誕生日の日付はそれほど重要ではない。 あぁ、助かった。 分からないよう、心の中で安堵する。 実は…春香の誕生日も、全く同じ日だったからだ。 こちらは分別のついた大人なので『その日』に祝う意味合いが大きい。 それに幼馴染のことで、俺の言いなりだった春香への愛おしさが倍増しており、今年は優先権を与えてやろうと思う。 土曜日は春香と過ごし、日曜日に香織と遊園地に行く。 忙しいが、なかなか充実した週末になりそうだ。 二人が同じ誕生日というのも、なにか運命めいたものを感じる。 ドラマの主人公にでもなったかのような…。
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