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※シーン02:御屋敷の廊下にて。
※シーン02:御屋敷の廊下にて。
「はぁ……♡」
「…えーと……」
夢見心地だった瀬本朱亜(せもとしゅあ)がハッと振り返ると、こちらを見ている木崎映瑠(きさきえいる)が居た。
そういえば、今は仕事中。思い出し笑いしている場合じゃない。
「…すみません、仕事中に!…気が緩んでました」
「いえ……」
どこか流れる気まずい空気を、振り払うように木崎(きさき)は続けた。
「ところで、瀬本(せもと)君、僕、明日は有給を頂くから」
「え?珍しいですね……?」
「外国に居た弟がね、久しぶりに帰国するんだよ……」
「へぇ……」
?
ふと、感じた違和感の命じるまま、朱亜(しゅあ)は続けた。
「……の割りにはあんまり嬉しく無さそうですね…?」
「……まぁ…うん……」
「……?」
(そこ頷くんだ?)とは思ったが、なんとなくそれを口に出すのははばかられた。
木崎は遠くを見つめたまま、独り言ちる。
「なんで今更……はぁ…」
……よくは分からないが、なんかお疲れなんだな……。
せめて晩御飯の一品は、木崎の好物を多めにしてやろう。
確か塩麴に漬けた鶏からが好きだったよね、と思い出しながら。その日はどこかいつもより元気がない先輩をいたわるべく、瀬本朱亜(せもとしゅあ)はキッチンへと向かうのであった。
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