※シーン05:その夜の枠にて

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※シーン05:その夜の枠にて

* * * ※シーン05:その夜の枠にて  その日の夜、綿貫サクマ(わたぬきさくま)の定期配信があった。  もちろん、すもあもそれに参加したのだが。 「もあもあさん……」 「ん?なに?たぬちゃんさん!」 「ううん、なんでも?」 「たぬちゃんさ……」 「なぁに?」 「あっ…ううん!なんでもないですお……」  いつもなら。  そう、いつもなら感じない、お互いの妙な距離感に、サクマもすもあもどうしていいのか分らないままだった。  「……」 「……」 「(なんか……話しかけづらい)」 「(なんで、距離?取られてるのかな……?)」  サクマは、サクマで。  すもあは、すもあで。  上滑りしたままの空気を払拭できなくて。 (……聴かれるのかな、?)  サクマは訝しんでいた。 (引退した理由とか…リアとの事とか、色々……)  すもあの口から訊かれるのは、……少々辛い。  痛みとして、突き刺さるだけじゃきっと足りない気がする。    そして、すもあの方は、サクマの雰囲気がいつもと違うのに気がついている。そして、どことなく拒絶されているのにも。 (……あたし、なんかしたのかな……?) (……なんだろ……)  目の前に広がった距離は壁となって立ちふさがる。  すもあには、その意思がないのに、サクマは自身の内面にある疑心を持て余していた。  そして、会話は特に弾まないまま、ただ時間は過ぎていった。 (どうしよう。会話が続かない…えっと、、枠時間はあと……)  サクマの焦りから、ほぼ無言に近い配信になっている現実。 (今、どんな顔してるか、目も表情も分からないのって、なんだかちょっと……)  アイコンや、背景などは分かる。  でも、直接彼女の…綿貫サクマ(わたぬきさくま)の顔と目を見て話せない事実が、ここにきて、なんだか酷く悲しかった。    ――どんな表情で、どんな感情で、今居るのかな……?   それは決して、叶うはずがない想いなのに。 「……ごめん、今日は配信ここまでにするね」 「えっ?!……あ。『終了しました』……」
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