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第50話 どこにでもある普通の恋だから
この写真が撮られた時はまだ4月だった。でもその頃には好きでいてくれたってことになる。
「どうしてわたしのこと…」
好きになってくれたの?最後まで言えなかったのに…
「璃世が、普通だったから。」
蒼が言った。
それを聞いて気がついてしまった。
中学の時、蒼の髪の色が元から茶色いってことを知らなかった末永さんは、蒼に髪の毛を黒くするように怒ってたって聞いた。
その時、確かに、蒼は末永さんを好きだったんだ。
だから、末永さんが別の中学に行って、蒼の外見のことしか言わなくなって、友達に蒼とのことを自慢したりするようになって、蒼は傷ついたんだ。
「お寿司のキーホルダー取りに行く?全部の種類欲しいんだよね?」
「マグロのはどうした?」
カバンからマグロのキーホルダーがぶらさがってる自転車の鍵を出して蒼に見せた。
「使ってる人見たことないけど?」
「どうしてそういうこと言うかなぁ。蒼がくれたんじゃん。」
キーホルダーをカバンに戻そうとして、下に落っことしてしまった。
それを2人して拾おうとしたから、お互いのおでこを思いっきりぶつけた。
あ…
写真集の最後の写真、あの時のだ。
ベンチに座ってた時、璃亜にお土産で買ったガラスの小さな猫を落としてしまって、2人で拾おうとしてお互いのおでこをぶつけてしまった。それで顔を見合わせて笑ってしまった時の。
今もまた顔を見合わせて笑ってしまった。
蒼はわたしに手を差し出してくれた。
いつも蒼に手を差し出してもらってた。
「行こっ。」
だから今度は、わたしから蒼に手を差し出すよ。
そしてその手を離したりしない。
「璃世、大河と恋人つなぎしたよね?」
「何で知ってるの?」
「あいつはそういうやつだから。」
「でもあれは、『彼女のフリ』してた時だったから。」
「いつの間にか大河のこと名前で呼んでるし。」
「そう言えば、あの日、『呼べ』って言われて、それから何となくそのまま呼んでるかも。何でさっきから大河のことばっかり言ってるの?」
「わからなくていいし、知って欲しくない。」
機嫌が、悪い?
わたしは今、蒼と恋人つなぎをしてるんだよ。
蒼は、ピーマンだって残すし、お寿司のキーホルダー持って嬉しそうにしてるし、この前なんて自動ドアと間違えて思いっきりガラスにぶつかってた。
変な味のジュースは絶対買ってしまうとこあるし。さっきはゴーヤジュース飲まされた…
ふてくされたり、照れたり、意地悪だったり。
でも、そんな蒼が好き。
END
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最後までお読みいただきありがとうございました。
このお話には、璃世の双子の妹、璃亜と大河のお話を書いた番外編があります。
よろしかったらそちらもお読みください。
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