第1話 関わりたくないのに

1/1
前へ
/51ページ
次へ

第1話 関わりたくないのに

三池璃世 高校一年生。 少し長めの前髪に、三つ編みの二つ結び。 そしてメガネ。 これが今のわたし。 目立たないように。 誰の目にもとまらないように。 そんな風に過ごすために、誰もわたしのことを知らないこの高校を選んだ。 入学式から1週間。 ぼっちなのは気にしてないんだけど、こういう時ちょっと困る。 初めての移動教室で、理科室がわからない… 体育の後、もたもたしてたらみんな移動してしまった後で、教室にはもう誰もいなかった。 それで校舎内をうろうろしていたら、隣の校舎とを結ぶ渡り廊下に知った顔を見つけた。 同じクラスの周防大河。 道の真ん中をずっと歩いてきたようなやつ。 いつも女の子に囲まれてて、その中央にいる。 アイドルグループでいうなら絶対的センター。 短いグレーアッシュの髪の、軽薄そうな「オレ様」タイプ。 今も、数人の女の子を引き連れて歩いている。 でも、こいつの後ろをついてったら、理科室に行けるはず。 少し離れて後ろをついて歩いていたら、後ろから来た子がわたしにぶつかっていった。 そのせいでかけていたメガネが飛んで、思いっきり壁に当たってしまう。 その子は一瞬こっちを見たけど、無視して周防の取り巻きの中に溶け込んでいった。 急いでメガネを拾おうとした時、別の手がそのメガネを拾い上げた。 思わず拾った相手の顔を見てしまう。 「三池さん?」 そう言われて、奪い取るようにメガネをとってかける。 「それって…」 「ありがとうございました。」 相手が何か言いかけたのを遮るようにお礼を言うと、周防を通り過ぎて、真っ直ぐ隣の校舎に向けて走った。 もう理科室は諦めた。 わたしのメガネを拾ったのは、如月蒼だった。 周防といつもつるんでるやつ。 入学式で新入生代表を務めてたから、トップの成績で入学してきた成績優秀者。 少し長めの黒い髪で、わたしと同じようにメガネをかけている。 いつもにこにこしてるけど、何考えてるのかわからない。 仕方がなくそのまま保健室に向かった。 保健室に先生の姿がなかったので、誰もいないベッドに潜り込む。 如月にメガネを外した顔を見られてしまったけど… 大丈夫だよね? あんな一瞬なら。 「ねぇ、誰か来たらどうするの?」 「誰も来ないって。先生も会議でこの時間はいないから。」 「だったらいいけどぉ。」 誰かが話しながら、わたしが寝ている隣のベッドにやってきた。 よくないでしょ… 保健室でやめてよ。 仕方がなく、咳をして存在を知らせる。 「やだ。誰かいるじゃん、わたし行くね。」 女の子の方が出て行く音がした。 少しホッとしていると、いきなりベッドとベットを遮るカーテンが開いた。 「誰がいるのかと思ったら、同じクラスの…誰さんだっけ?」 シャツのボタンを真ん中あたりまで外したままで、黒川賢太が言った。 金髪青い目の思いっきり外人顔のくせに、日本語しか話せないというやつ。 入学式から1週間しか経ってないのに、もう女を連れ込もうとしてるなんてあきれる。 「せっかくいい感じだったのに。責任とってもらおっかな。」 そう言いながら、こっちのベッドに来ようとしたところで、 「先生いますか?」 と、入り口のドアのところで誰かの声がした。 それを聞いて、黒川はカーテンを閉めた。 何で今日はこんなついてないんだろう。 関わりたくないやつばっかと居合わせる。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

64人が本棚に入れています
本棚に追加