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第2話 わたしだけの場所だったのに
屋上に通じるドアは、生徒が入れないように鍵がかかっていたけど、ちょっとガチャガチャやってみたらすんなり開いた。
それ以来、屋上でひとりでお弁当を食べている。
いつも誰も来ない…はずだったのに…
「開いてるじゃん!」
「誰もいない。」
「へぇ、こんなとこがあったんだぁ。」
何で?
よりにもよって、周防に如月に、黒川まで!
3人がいつも一緒にいるのは知ってたけど、ここに来ることないじゃん。
近づいてくる足音に、咄嗟に貯水タンクの裏側に隠れた。
「ケンタ、女連れてこようとか考えんなよ。」
「バレた?いいでしょ。」
「せっかく誰も来ない場所見つけたんだから、静かになりたい時に使いたいし。」
「大河にも静かになりたい時とかあるんだね。」
「あるよ。オレだって。」
「ふうん。」
「蒼、お前って時々ムカつく。」
今日ってついてない!
あの3人が出ていかないと、わたしまで出られない。
食べかけのお弁当を片付けていると、急に膝の上が日陰になった。
見上げると、如月が立っている。
人差し指で「しーっ」と合図すると、目の前にしゃがんだ。
そして、わたしのメガネを勝手に外して言った。
「やっぱり、これ伊達だよね?」
黙っていると
「僕のも伊達だから。」
と言って、やっぱりにこにこしている。
「これ、レンズに傷入っちゃってるのは、ぶつかって落とされた時のだよね?」
「返して。」
「大河に弁償させないと。」
「いいんです。返してください。」
「ふうん。じゃあ、代わりにこれあげるよ。」
如月が渡してきたのは、QRコードが印刷された正方形の小さな紙だった。
「メガネのお詫びに、困った時一度だけ助けるよ。」
「そんなのいらない。」
「まぁ、何かあった時のためにとっておいてよ。三池さんがここにいることも黙っとくね。」
それだけ言うと、わたしの前から立ち去った。
もらった紙をその場に捨てようとしたけれど、結局ポケットに突っ込んだ。
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