ドコなん?ココ

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ドコなん?ココ

そう広くない暗い部屋にローブを着た男が一人ブツブツと呟いていた 「やっと此処まで来れた、あとはこの魔法陣を発動するだけ・・・」  そう言って男は長い詠唱を始める。  詠唱を始めて数十分、男の額には汗が滲み、かなりの魔力を絞り出していた、いや魔力だけでは足りず生命力を魔力へと変換し顔を歪ませ苦痛に耐えながら長い詠唱が終わろうとしていた・・・ 「・・・●■▲■●◆!」  魔法陣から光が発せられ眩く点滅を繰り返す、そして輝き、そして門が現れた。 「・・・・異界の門よ開け、そして此の地を絶望に!!」  男は古い文献から異界からの魔人召喚の魔方陣を見つけ出し、数十年にかけて研究し発動までの方法を見つけ出した。  それは一人の魔法使いでは到底魔力は足りず数十人の魔法使いが長い詠唱唱和と膨大な魔力を使い行う秘術であった。  しかし昔と違い、魔力を貯める事の出来る魔石の研究や、一人で特大魔法等が出来るようにする技術詠唱も研究されており、この男は自分一人で異世界の門を召喚する事が出来たのである。  なぜ一人で行ったのか、それはこの男が此の王国を恨み、そして破滅させる為の召喚魔法であり、他の人間にバレるのを恐れたのが一つ、そしてこの場所が王城の一室であり複数の人間の出入りはさせられない、ましては王国の破滅が目的とあれば・・・。  そして中央に組まれた魔法陣から現れる門。  男は生命力も使い切り膝を突き最後の力を振り絞り門を見つめる、思ったよりも簡素な・・・ツルリとしたシンプルな門・・・いや、門というよりも両開きの扉を見つめる。 「おぉ・・・魔人でも悪魔でも何でもいい!門を開きこの国を滅ぼしてしまえ!!!」  そして門が微かに開く、光が漏れ・・・・少女が現れた・・・。 「え?」 「え?」  少女と男の声が被る、そして男はそのまま意識を無くし、そのまま永い眠りに付いた。  少女はパニックである。 (え?まって?泥棒?いや、クローゼットの中広くない!?どうなってんの?このおじさん動かなくなったけど!大丈夫なん?警察?救急車?どうしたらいいーん!????) _____________________  少女はリビングで晩御飯を食べていた。  母親は幼い頃に病気で亡くなり、父は一人娘に苦労を掛けまいと必死で働き一人娘の藤井千春はその背中を見ながら育ってきた、家の事は何でも出来る。  高校生にもなり、晩御飯なんて普通に作るし一人は慣れたもんである。  父は必死で働いたせいで逆に会社での評価が上がりすぎ、今では海外での大事な部門の責任者であった、娘を一人置いて海外なんて!と断ってきたものの高校生にもなり、父親の晩御飯も準備して待ってるような何でも出来る娘に。 「はぁ?お父さんのチャンスなんだから行っといでよコッチは大丈夫だからw」  と、あっけらかんに言われ海外出張中である。  不意に、ふわっと光が溢れた、何かと思い見回すとクローゼットの隙間から光が漏れていた。 「え?」  何かと思いじーっとクローゼットを見つめる千春。 「・・・・(光ってたよね?)」そーっとクローゼットに近づき扉を触る、先ほどでは無いが光が漏れている、扉をゆっくり開いてみると・・・服がない・・・いや奥が広い・・・おっさんが居た。 「え?」 「え?」  おっさんと見つめあい声が被る、おっさんは「ぁぁぁぁ・・・・」と悲しそうな顔をしながらゆっくりと倒れこんだ。  千春は脳内大パニック、何が起きてるのか、如何したらいいのか、ぐるぐるぐるぐる、そして脳が活動停止、時間が止まってしまったのである。  ほんの数分だと思われた沈黙の時間、その暗い部屋にほんのりと光る魔方陣の部屋の入口のドアあたりがざわつく、千春もはっ!っと頭が回りだした時その部屋のドアが開いた。  ガチャりと音を立てたあと勢い良く開いたドアから体格の良い男性数人とローブを着た背の高い・・・イケメンが入ってきた、そしてイケメンローブが叫んだ。 「◎△$♪×¥●&%#!!!」  千春は眉間に皺を寄せつつ・・・(え?何言ってんの?このイケメン)それはそうだ、日本ではない、この国の言葉なんてわかるわけがない。  体格の良い西洋っぽい鎧を着た男が、倒れたおっさんに近寄り何かしている、イケメンローブは千春に近づきながら・・・いや警戒しつつ話しかけるが当の千春は。 「はぁ?英語じゃないよね、何語なん?」  と呟き、首を傾げるばかり、部屋の扉近くにいた別のローブの人に話しかけた後ローブな人は走って行った、そしてイケメンローブは魔方陣を調べながら数人に指示っぽい事をして千春に近づき、にっこりとしながら話しかけてきた。 「いや、わかんないから・・・・」  おっさんは運ばれて行き、数人のローブの男たちが出入りする、そしてしばらくして最初に出て行ったローブの男が帰ってくるとイケメンローブに何か渡していた。  千春はそれをじーーーーっと映画でも見てるように・・・そう、ぼーーーっと無表情で字幕のない洋画をなにも考えずぼーーーーっと見てる感じで見ていた。  イケメンローブが此方に手を出して何かを渡して来ようとしたので思わず千春は後ろに下がった、そんなに警戒していたわけではないが、知らない男が手を出してくる、ましてやクローゼットの中という異常な状況で何が起ころうか想像もつかないのも当然だ。  そしてイケメンローブの手が扉を抜けようとしたとき・・・手が止まった、いや止まったというよりも通れなかったのである、そしてイケメンローブが一言話す。 「この扉は私には通れないんですね」 「えー!日本語しゃべれんの?!」  千春は思わず叫んでしまった。 「あぁ、今この指輪を持っていますから、翻訳魔法を掛けた魔道具です、この指輪を持っていただけたら此方の言葉も分かるかと急いで持ってきました、そのニホン語と言う言葉は知りませんが通じてる様でよかったです、良ければこの指輪を持っていただきたいのですが・・・」  そう言って一歩下がるイケメンローブ。 (あーそりゃそうか、今言葉分かるのこの人だけだもんなー、私が持てば全員わかるのか・・・)  恐る恐る扉に片足半身だけ乗り出し指輪を受け取る。 「持っているだけでも効果有りますので指に付けてもらわなくても大丈夫ですよ」  そう言われて指輪を受け取る。 「ありがとうございます・・・で、ココは何なんですか?」  当たり前に思った事を聞いてみる。 「はい、此処はジブラロール王国、王宮内の王国魔導士団研究棟の一つで、私は王宮師団長のローレルと申します、魔力波を感知しまして、急いで駆け付けたのですが、先ほどのザクエル・・・倒れていた男ですが異世界の扉を召喚する魔法を使ったようですね。」  そう言うとローレルは魔法陣を見ながら話を続ける。 「何の為に扉を開いたのか、何故貴女が現れたのかは調査してみないと・・・お答え出来ないのですが」 「はぁ・・・って異世界なの!?ここ!」 「はい、魔法陣を調べてみましたが古代魔術語で異世界の扉を表す言葉が有りました、詳しく調べてみますが、そちら側は異世界・・・というのは間違い無さそうですね、ニホン語という言葉も初めて聞きましたし。」 「それじゃこのクローゼット閉めたらその魔法陣っての消えるのかな?」 「いえ、常駐型の設置魔法陣なのでディスペル系の魔法で打ち消すか、今現状の魔力が消費され無くなるまでは消えませんしその扉もそのままだと思います。」 「どんくらいで消えんの?」 「そうですね・・・早ければ4~5年、長くても10年せずに消えると思われますが・・・。」 「えええええ・・・リチウム電池かよー・・長くない?」 「それがザクエルは魔力と一緒に生命力まで使い、一生分の力をすべて注ぎ込んでしまったようで・・・まぁ本人がそれを狙ってやったのか魔法陣に吸われたのかは分かりませんが、それ位の魔力という事です」 「・・・・・・」 「・・・・・・」  両者沈黙・・・そして千春は一言 「とりあえず晩御飯食べてから詳しくよろしく・・・・」  そう、晩御飯は冷え切っているが、食べてる途中だと思い出し片づけもお風呂もまだなのに・・・と、ちょっと、そうちょっとだけ現実逃避に走ってしまったのはしょうがないのであった。
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