よいちくん。

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 ***  その日は、それで話が終わった。不審者が出てちょっと気持ち悪かったと、家族にそう愚痴りはしたが。  問題はその翌日。なんと、彼女は再び僕の前に姿を現したのである。正門の前に立っていて、再び同じことを尋ねてきたのだ。 「真壁世一くん、という子をご存知ありませんか」  僕はその日も知らないと答えた。ところが。 「真壁世一くん、という子をご存知ありませんか」  その翌日も。 「真壁世一くん、という子をご存知ありませんか」  その翌々日も。 「真壁世一くん、という子をご存知ありませんか」  その翌々々日も。  女性は僕の前に現れて尋ねてきたのである。それが一週間も続けば、流石に僕も気持ち悪いと感じてくる。一体彼女は誰なんだろう。何故、世一のことを僕に尋ねてくるのだろう。彼ともっと親しい友人なんて、いくらでもいるというのに。  そろそろ先生にもちゃんと話した方がいいかと思い始めていた、その矢先位のことだ。  半月ほど続いたところで、彼女は急に姿を消した。突然諦めたのだろうか。あるいは、目的を達成したのだろうか。いなくなればいなくなったで、それはそれとして気になるのも人間である。僕は彼女に会わなくなった朝、教室で親友の祐樹(ゆうき)拓哉(たくや)にその話をしたのだった。すると。 「マジ?シーもその女に会ってたの?」  ちなみにシー、というのは僕のあだ名。苗字が志岐だからだが。 「オレも実は、学校に来るたび声かけられてて、きもいなーって思ってた」 「おれもおれもー」 「え、二人とも?ほんとに?」 「ほんまやで。サダコでも出たのかと思ったわ。まあ、朝っぱらから、堂々と学校の前にサダコが立ってるってのもなかなかシュールやけどな。で、あんまりしつこいから、つい昨日答えてもうたんや、おれ。知ってますって」 「ええ!?」  まさか、拓哉があの女にイエスを返していたとは。それは祐樹も知らなかったようで、“言っちゃったのかよ”と目をまんまるにしている。 「だって言わないと、えんえんと質問されそうで嫌やったんや。そしたらあの女、なんかこう、唇をきゅーっとしてな。気持ち悪い笑い声を出して、こう訊いてきたんや。“彼はどこに住んでいますか”って。クラスを尋ねるわけでもなく、家を訊いてくるのってちょっときもいやろ。でも、どっちみちおれ、世一とそんな仲良いわけでもないし家の住所なんか知らん。三丁目のへんに住んでるってことしか知らんって正直に言うたわ」
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