邪神の住む世界

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邪神の住む世界

「だから、言ったんだ」 音羽は、地面に這いつくばる颯太を見下ろして言った。 「まだ、早い。準備ができていないんだ」 「準備?僕は、そんなの誰も、待ってくれない」 「誰も、君の事を言っていない」 音羽は、少し、怒っている様だった。 「考えもしない行動が、他人を危険に巻き込むんだ」 「あれ?っと言う事は、僕ではなく」 「そうだよ。晴。だよ。まだ、何も、準備ができていない。危険すぎるんだ。」 「だって・・・晴を連れてきたのは?」 音羽は、ムッとした。 「あたしだよ。お前を助ける為、やむなくだ」 音羽は、珍しく、地面に降り、宙を見上げていた。 「無理かもしれない。だけど、これも、試練だよ。晴」 じっと、見つめる宙には、黒い闇が渦巻いていた。 「一体、何が起きたんだ?」 晴は、起き上がり頭を振った。 「ここは、どこだ?」 わかるのは、自分の家ではないとの事。どこまでも続く砂漠の中に晴は居た。そばには、一本の枯れかけた木が、立っていた。 「見慣れない景色だけど」 自分の記憶を辿ってみた。突然、現れた音羽の髪に呑まれ、もがいていたら、突然、宙に放り出された。 「げ!」 聞きなれた少年の悲鳴と頭痛が遅い、気がつくと、この砂漠に落とされていた。 「全く、一体どこだ?」 立ち上がろうとしたが、頭痛が酷く、目眩がする。どこかに、寄り掛かろうにも、何もない。仕方なく、古木に捕まろうとするが、伸ばした晴の手を、古木がすり抜けていく。 「なんだ、この古木。意志があるのか?」 古木は、風もないのに、ゆらゆらと揺れている。 「気持ち悪いな、こんな所に、一本だけの木なんて」 晴が触れようとすると、体をよじる様に逃げる古木。よく見ると、二人の人間が身を寄せ合う様にも見える。 「もしかして?」 一本の木に見えた古木は、少女が互いに体を寄せ合い、立っている姿だった。 「人間の少女?」 晴が気付き、よく、姿を見ようと目を凝らすと、顔と思われた部分が、急に動き出し、両目を開いた。 「気づいた?」 少女は、晴の顔を見つけると急に大きな声を出した。 「気づいたみたい。ねぇねぇ、誰かいる?」 「いるよ。ここにいる」 抱き合う様にいた、もう一人が声をあげる。 「夜ならないうちに、変えればいいのに。夜になったら、殺されるよ。」 「殺されてしまえばいい」 2人は、口々に叫び、身をよじる。 「あのさ・・」 古木が、2人の少女だと言うのも、衝撃だったが、晴は、思い切って声をかけた。 「夜になると、誰かが来るの?」 「お前なんて、食われてしまえ」 「闇の主に食われるがいい」 2人は、自分達の体が、晴に触れてしまった事が、嫌だったようだ。 「あっち行け!」 「ここに近寄るな」 晴が近寄ろうとすると、2人の少女の声が大きくなってしまうので、晴は、離れる事にした。どこまでも続く砂丘の上を歩いて行くと、ついに、足元を掬われ、谷へと滑り落ちてしまった。気がつくと、辺りには、満点の星が輝く、夜になっていた。 「夜か・・・」 古木の少女が言っていた夜がやってきていた。
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