拝啓。除霊は霊にお任せください

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拝啓。除霊は霊にお任せください

「手に負えるのか?」 音羽は、いつものように、男っぽい口調で確認していた。音羽は、男なのか、女なのか、わからない。今、流行りのジェンダーレスだそうだ。女の子になりたかった男の霊なのか。男の子になりたかった女の霊なのか、詳細は、わからない。ある事件をきっかけに、颯太の相方になった。 「仕方ないよ。自覚がないんだ」 颯太は、近所の駄菓子屋の2階で、ひっくり返った。耳の遠い老婆さんが店番をしている、物置代わりの2階は、颯太が、自由に使っていた。 「一人で、解決できそうか?」 「そうだなー」 寝そべる颯太の顔を、宙に浮いた状態で、音羽は、見下ろす。 「今回は、俺は、無理だな」 音羽は、消極的だった。 「苦手なんだな。その手は」 「ふうむ」 颯太は、考え込みながら、携帯のメールを見上げていた。見ると長い文章が連なっている。 「幾らで、引き受けたの?」 「解決料50万」 「50万円?」 「その位、当たり前だろう?」 「いや・・・安いと思って。日常生活を取り戻せるのなら、その位だよね」 「あまり、大物に睨まれないようにしないと」 「あいつ、協力してくれないとなぁ・・まぁ、無理だな」 颯太は、ため息をついた。音羽は、横目で、確認すると、困った顔をして、2階の天井に吸い込まれていった。 「俺は、心配だ」 吸い込まれながら、小さな声で、呟いた。 「そう言われても」 返事を返しながら、メールに目を落とす。颯太は、小さな頃から、人には、見えないものが見えていた。それを恐れた颯太を、祖父が知り合いの僧侶にお願いして、寺に入れてしまったのが、十年以上も前だった。そこで、颯太は、不思議な体験をする事になる。寺を逃げ出し、実家に戻った颯太は、霊障に苦しむ人の手助けを行う事になる。 メールには、新たな依頼が書き込まれていた。メールは、評判を聞いた人達から、多く、届いている。一つ、一つを読み解くには、時間がかかるため、音羽が、選んだ件を、選ぶ事にしていた。だが、今回は、いつもとは、違かった。 「これは、選ぶな。お前には、無理だ」 音羽は、メールを颯太が、見ている側で、削除しようとした。 「待て待て・・・どうして?」 「嫌な事を思い出す事になる」 音羽は、颯太が、巻き込まれた一件を思い出させる事に、抵抗があった。 「僕は、思い出したいけど」 「やっぱりダメだ」 音羽との出会いも、その一件が原因だ。山奥の寺にいる時に、出会ったのだが、その時の細かい事を、颯太が、思い出す事を拒んでいる。 「別に教えてくれたらいいのに」 「とにかく、ダメだ。1人では、無理だ。どうしても、やるというなら、尋ねた方がいい人がいる」 そう言い、尋ねたのが、末端教師の家だった。 「結局。まだ、開いてないんだ」 音羽は、首を振った。 「とにかく、関わるな」 音羽は、颯太の見ているメールを削除していた。
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