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写真のはなし
久しぶりに会った霊能力者もとい、呪われ代行屋のおにーさんの第一声は『うはっ!』という全力全開の失笑だった。
両側からアタシちゃんをギュッと、ミチッと挟み込んでいる二人を交互に見たスミちゃんは、にやにやした若干腹立たしい顔のまま腹筋に力の入っていない声をへにゃへにゃと繰り出す。
「……どったのよ、さゆりんちゃん、両手に花……いやぁ、花、かなぁ?」
「花じゃないっしょこれ……もーもー大変だったんですよぉ、スミちゃんもちょっと言ってやってくださいよぉー確かにぃアタシちゃんはぁ、か弱い系女子大生ですけどー、こんな二人係で支えられるほど弱キャラじゃないっていうかぁ」
「何言ってるの紗由ちゃん、目の周り隈で真っ黒なんだよ……!? ご飯も全然食べれてないって言ってたじゃない!」
「この家の階段すら上がれない状態でしたからね。私が引き上げなければ安楽川さんに足を掴まれていたかもしれません」
「スミちゃん~両側のお花たちが~過保護でつらい~」
「まぁまぁ、心配してくれてんのはありがたいことだよ。ぼかぁ小言なんか理由がなんであれうるっせーなと思っちまうけどね、最近のこまどちゃんの叱責くらいは家族愛だなぁなんてしみじみしちゃうからねぇ。まあ、お座りよ。こまどちゃんも、みっちゃんもまあ落ち着きなさい。ここはとりあえず安心だ、あ、いや安心か? うーん、安心ってわけでもないけど、とりあえず――」
■■の棲み処には大概のものは近づけないからね。
そう笑うスミちゃんは久しぶりにとんでもなく、涙が出るほど頼りになる男に見えた。
本来このひょろいお兄さんは、とんでもなく頼りない。というか、生活能力はミジンコだし、食って寝てうらやましいことに先輩とおしゃべりする以外はほとんど何もせずに過ごす。腕なんかは本人も言う通りのもやしだし、スーパーイケメンって感じでもない。
でも、そんなスミちゃんでもすごーくすごーーーく輝く瞬間がある。
そう、それは誰かの除霊をするとき。
呪われている誰かの代行をするとき。
お察しの方もいるだろう。えへへ、うふふ、もうね、笑ってないとやってられない。そう、アタシこと宇多川紗由は本日、――人生三度目の『呪われ代行』を依頼しに、荊禍栖の仕事場に顔を出したのだった。
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