美しいユリ

5/6
前へ
/6ページ
次へ
 ベンチに座ると、やっと解放された。女性に身体の一部を触られたことに、ドキドキが止まらないでいた。しかも、憧れのオークスのレイヤーさんだ。 「アンタ、痩せたよね。有馬優駿になるために、がんばったんだ?」 「はいっ!」  背筋をピンと伸ばし、大きな声で返事をした。 「私が誰だか、わからない?」 「わかりません!」 「こうやって、も?」  オークスが、手でメガネポーズを作ってみせた。ただかわいいだけで、まるで誰だかわからず、首を傾げた。 「そっか。じゃあ私、ちゃんと化けられているんだね」  にっこり笑うと、綺麗な白い歯が見えた。アニメの中のオークスが決して見せない表情。それがオレのハートをガッチリ掴むと、離してくれなくなった。 「今度来る時は、もっと身体作ってきなよ」 「はい! ありがとうございました!」  ベンチから立つと、身体を半分に折り曲げて、去り行く背中を見送った。  
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加