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「でも逆に男性は年取るごとに欲が減っていくんでしょ?」
人間てよく出来てるよねえ、と彼女は呟く。僕はドライヤーを取り出して、マイナスイオンで髪をなびかせる。
「だから僕達は性欲が今マイナスとマイナス同士だ。だから意外とプラスになることもあるかもしれない。」
「翔くんは欲が無いの?」
「無いと言えば嘘になる。」「何それ。バリバリプラスじゃない。」
結局マイナスじゃん、と舞香は笑いながら言った。
「私も前の人とは最初の1年は気持ちよくて、次第に最後の1年は苦痛になってきてね。なんで何かな。急に痛くなってやる気が起きなくなったの。でも彼のことは好きだったから、前戯の時間長くしたり色んな体位を試したりと色々やったんだけどね。結局はそれが大きな原因でバイキンマンよ。」
「ありがちなバイバイキンだね。」
「だから私は何の為にセックスをするのか分からないの。好きなのにそれが原因で別れることになるなら別にしなくてもいいのに。だけどもそういう訳にはいかない。だから打てる手は全て打ってきたの。」
でもダメだったんだよね、と電話越しにか細い聞こえる。マッチングアプリで知り合う人とは、大抵性の話になる。僕も前の彼女に対してもそうだった。
「やっぱりある種の本能だよ。」「本能?」
「なんていうのかな、ほらよく言うじゃない。営みは愛情表現だって。好きな人と繋がることは自然なことだって。でも、僕は違うと思うんだよね。」
「違うの?」
「みんなただ純粋に自分の性的嗜好を満たしたいだけなんだよね。ただ純粋に。」
「んー、よく分からない。」
「例えばさ、いるじゃん。首絞めながら突いて欲しいって女の子が。あとお尻を叩きながら、とか。」
「翔くんってSなの?あなたがそーゆー嗜好をお持ちの方?」
「そうかもしれないし、違うかもしれないし、いつか目覚めるかもしれない。」
「なら違うじゃん」と舞香は笑う。
「君が言うそういう嗜好をお持ちの人ってさ、やっぱり色眼鏡で見られがちじゃん。クセが強いって言うのかな。でも好きな人への愛情表現だの自然な流れだのと言ってる人と、思考的には同じなんよね。」
「同じなの?」
「僕から言わせれば、好きな人と繋がりたい性的嗜好のお持ちの方って感じ。」
「ほーん」舞香は興味無さそうに頷く。
「みんなもっと気づくべきなんだよ。自分はそんなに綺麗に生きてないってことを。」
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