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この会社の社長になったとはいえ、掛け持ちなので常駐ではないのだ。
「こんにちは、檜垣さん!」
挨拶だけしてパソコンと向き直る。
「夏音ちゃん、昼メシ行こうぜ」
私のデスクにきて、彼は天板に手を置いてしゃがみ込んだ。
「すみません、私はちょっと……」
食事に行く時間すら惜しい。
それくらい、仕事が押していた。
「ダメだ」
急に厳しい声が聞こえてきて、手が止まる。
「まともにメシ、食ってないだろ。
俺がいるときくらいちゃんとメシを食え。
そんな時間もないっていうなら、末石さんに交渉させる」
「でも……」
「社長命令」
渋っていたら彼は無理矢理私を立たせた。
「……わかりました」
ここまでされて彼の気持ちを無駄にできない。
手早くパソコンをスリープ状態にし、バッグを持った。
檜垣さんが私を連れてきたのは、いつかも来たカフェだった。
「ラッキーだな、今日のサンドイッチはローストビーフだってよ。
元気のないときはやっぱり、肉だよ、肉」
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