507人が本棚に入れています
本棚に追加
笑いながら彼は私の希望など聞かず、それをふたつ注文した。
「ちゃんと食って、ちゃんと寝ろ。
仕事に逃げるな。
天倉さんを取り戻すにしても、夏音ちゃんになんかあったら、話にならないんだからな」
「……はい」
檜垣さんの言葉はもっともすぎて、肩を丸めて小さくなった。
確かに今、私が倒れたら、有史さんを取り戻すどころではなくなる。
「俺が絶対になんとかしてやるから、心配しなくていい。
大船に乗った気でいろ」
「……ありがとう、ございます」
力強く彼が頷き、少しだけ肩の力が抜けた気がした。
しっかり昼食を食べて会社に戻る。
まともな食事をしたのは、いつぶりだろう?
それくらい、有史さんがいなくなってから荒んだ生活をしていた。
「さてと」
帰ってきていた末石専務を含めて作戦会議……ではなく。
檜垣さんの説教が始まった。
「末石さん、社員の管理ができてなさすぎ。
このところ夏音ちゃんが突出して残業してんの、おかしいと思わなかったのかよ」
「うっ」
彼の正論に、末石専務はなにも返せないようだ。
最初のコメントを投稿しよう!