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檜垣さんが置いた封筒を引き戻し、ポケットにしまう。
「別の手を考えるかー」
慰めるように彼は少し笑った。
その後、しばらくはなんの進展もなかった。
ただ、お義父さんが病気らしいという話を聞き、少し心配になる。
しかし、それと有史さんが私と別れ、別の人と結婚するのは違う話だ。
あれから何度も、有史さんの代理だという弁護士が家に来ている。
彼との離婚と即時退去を求められたが、頑として首を縦に振らなかった。
直接私に言わず、代理を立てるなんて彼ならありえない。
それにこの家を離れたら、二度と有史さんと会えなくなる。
そんな気がしていた。
「メシ行こーぜ!」
その日は夕方になって檜垣さんが顔を出した。
「来るなら来ると連絡入れろ」
小言を言いながらも末石専務は笑っている。
「もう少しかかるから待ってろ。
古海は……」
「夏音ちゃんの仕事はもうしゅーりょー。
俺と仲良く待ってような」
私の前に顔を出し、檜垣さんはにかっと笑った。
それにはもう、逆らえない。
「はーい」
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