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私は深里さんの仏壇と向き合っていた。
遺影の中で彼女は、幸せそうに笑っている。
「きっと深里さんが助けてくれるから、大丈夫……ですよね?」
問いかけるも、彼女は笑っているばかりで返事はない。
でも、きっと私と有史さんの関係を、怒っているわけではないと思う。
「絶対に有史さんをこの家に連れて帰ってきます。
だから、見守っていてください」
手をあわせて立ち上がり、私は家を出た。
そのまま、以前来たことがある、檜垣さんの経営する高級レストランへ向かう。
今日は、檜垣さんとの婚約披露パーティだ。
といっても、フリだけれど。
「来てる」
控え室に戻ってきた檜垣さんが私に頷く。
招待状を出しても、有史さんに来てもらえないんじゃないかと不安だった。
これで、第一関門クリアだ。
「今日の段取りは覚えてるな?」
確認され、うんと頷く。
招待客の前で檜垣さんからプロポーズされ、差し出される指環を受け取る。
それだけだ。
わざわざ指環を用意するのは申し訳ないと思ったが、前回返されたのかあるからと彼は笑っていて、さらに申し訳なくなった。
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