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「大丈夫でしょうか……」
きっと有史さんが止めに入ってくれると信じているが、そうじゃなかったら?
想像して昨晩は、安定剤を飲んでも眠れなかった。
「そんなに心配しなくったって、大丈夫だって。
天倉さんを信じろよ」
「あいたっ!」
思いっきり背中を叩かれ、つい彼を睨んでいた。
「落ち込んでるより、少し怒ってるくらいのほうがいい」
謝るように檜垣さんが軽く肩をぽんぽんと叩く。
彼の言うとおりだ、私は有史さんを信じて、真っ直ぐ立たなければ。
「それにな」
一度、言葉を切った檜垣さんは真剣な目で私を見た。
「どんな理由があるにしろ、夏音ちゃんを傷つけ、泣かせた天倉さんが俺は許せねえ。
少しくらい痛い目見せてやりたい」
「檜垣さん……」
こんなにも彼は私を想ってくれている。
それは嬉しかったけれど、それに応えられない私は酷く心苦しかった。
「なんてな。
ま、俺から夏音ちゃんを奪った逆恨みだ」
檜垣さんは笑っているが、さっきのはきっと本心だった。
だからこそ、こんなに胸が苦しくなる。
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