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時間になり、檜垣さんと会場に入る。
「本日の主役の登場でーす!」
司会の声で拍手が起こった。
その中を、彼に腕を取られて進んでいく。
さりげなく確認したら、隅のほうに有史さんの姿が見えた。
隣にいる女性に、何事か耳打ちされて笑っている。
それに錐でも刺されたかのように胸が痛んだが、普通の顔を続けた。
会場の中央、開けてある場所に来て足を止める。
私たちがそこに到着すると同時に電気が落ち、スポットライトが当たった。
「夏音」
私の前に跪き、檜垣さんが私の手を取る。
「俺と、結婚してくれ」
指環のケースを開け、彼がそれを差し出してくる。
しかし、そこに入っているのは以前もらったものと違っていた。
「え……」
「これを受け取ってくれたら、今度はなにがあっても絶対に夏音を離さない」
戸惑う私を無視して、さらに檜垣さんが続けてくる。
こんなの、打ち合わせに、ない。
どういうこと?
「一度はフラれた俺だけど。
こんなチャンスをくれてありがとう。
今度は絶対に、夏音を離さないから」
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