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固まっている私の手を、彼が強引に握ってくる。
これを受け取ったら私は、有史さんを忘れて檜垣さんと結婚しなければいけないの?
そんなの、絶対にできない。
しかし彼の手を振り払おうとするが、その手は離れなかった。
「そのプロポーズ、認められないな!」
静かな会場の中、大きな声が上がって人々の視線がそこに集まる。
人波が分かれ、そこから声の主――有史さんが出てきた。
「僕の夏音を檜垣なんかに渡すわけないだろ?」
「いてっ、いててててっ!」
私の手を握る檜垣さんの手を、有史さんが捻りあげる。
「ならなんで!」
檜垣さんはその手を振り払い、有史さんの胸ぐらを掴んだ。
「なんで好きな女を泣かせてるんだよ!
あんたのせいで夏音がどれだけ傷ついたのかわかってるのか!
そんなヤツに夏音は渡せない……!」
憎しみのこもった目で檜垣さんが有史さんを睨みつける。
「……檜垣と結婚したほうが、夏音も幸せになれるって僕だってわかってるよ」
眼鏡の奥で目を伏せて有史さんが言った途端、私の腹の中に火がついた。
「勝手に決めないで!」
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