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笑っている彼の気持ちはわからない。
でも、今までのご恩を返すためにも、精一杯頑張らせてもらおうと思う。
和やかにパーティは進んでいく。
有史さんのご両親も招待したが、犬が心配だから無理だって断られた。
最近お義父さんが引退し、どうも生活が犬中心に回っているようだ。
「そうだ、有史さんにお知らせしとかないといけないことがあって」
「なんだい?」
少し背伸びをし、彼の耳に口を寄せる。
「……妊娠、しました」
私の顔を見た有史さんは、驚いているようだった。
「ほんとに?」
それに、熱い顔で黙って頷く。
「あっ、じゃあ、立っていていいのかな?
座ったほうがいい?
あとは、えっと……」
急に有史さんがわたわたと慌てだし、おかしくなってきた。
「無理しなきゃ大丈夫ですから」
「そうか、うん。
じゃあ今日から……ふたり分、大事にしないとね」
ちゅっと有史さんの、唇が重なった。
【終】
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