2.売店広場でダンスショー

3/8
前へ
/60ページ
次へ
人のあいだを抜けていくと、リッキーは知らない男の子と手遊びをしていた。別に、めずらしい事ではない。 男の子はまだ3才くらいだろうか。青いジャンパーを着ていて、青い靴を履いている。 「おばちゃん、今までありがとうねって」 テーブルにホットココアを置いて言った。 「へ?」 子供に両手をつながれたまま、リッキーが振り向く。男の子の方は、オレに見向きもしない。 「売店のおばちゃん。リッキーのことも気にしてたよ」 「あ、そう。おれも行けば良かったかな」 「おばちゃんからは見えてたから、大丈夫じゃない?」 リッキーの肩越しに、女の人が誰かを呼んでいるのが見えた。手をつないでいる子のお母さんだろう。ジーパンにスニーカーというラフな格好で、体の前には、ななめに抱っこ紐をしている。 「呼んでるよ」 オレが座りながら短く教えると、リッキーがその子に伝える。 青いジャンパーの男の子はゆっくり手を離して、リッキーの方を見ながら、女の人の方へ行った。 「ばいばーい」 と、手を振り返しているリッキーに聞く。 「知り合い?」 「ううん、いま友達になった」 めずらしい事では、ない。 リッキーは、誰とでもすぐに友達になる。気が付けば子供になつかれているし、目を離せばお年寄りからお菓子を貰っている。 相手が外国人でも、もしかしたら宇宙人でも、オレにはもう、あまり不思議には思えない。 2人でホットココアを飲み始めると、派手な音楽が近づいてきた。 スチャラカチャッチャ、パッパラパ、スチャラカチャッチャ、ドンドンドン。 何となく調子がはずれていて、どっちかと言うと、盛り上がるより気が抜ける。スピーカーはビリビリ、ザラザラと音割れしている。 土日の10時、13時、15時にあるパレードだ。 最近はずっと平日に来ていたから、遭遇したのは何年かぶりだった。
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加