2.売店広場でダンスショー

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動物園エリアの方から、メリーゴーランドとティーカップの間を回って、売店のある広場に向かって来るのが見える。 大太鼓を抱えた男の人を先頭に、ラッパ、小太鼓、シンバルと、楽器を持った人が行進してくる。 その後ろには、ステップを踏んだり、踊ったりするダンサーがいる。全員、しましまの衣装と帽子の格好で、男の人と女の人が交互になるよう並んでいる。 顔は白塗り、眉毛や目や口を黒で縁取って、その線に合わせて、女の人のネイルに使うようなキラキラしたラインストーンを貼っていた。 最後に、ラックとシマーのきぐるみが、両手を振ってスキップしながらついてくる。 ラックはサルの男の子で、シマーはシマリスの女の子。しまらくこども遊園のマスコットキャラクターだ。 広場に着くと、鼓笛隊とダンサーがひろがってスペースを作った。オレが見ていた時と内容が変わっていなければ、ここからは、パレードがダンスショーに切り替わる。 イスに座っている客は、ほぼ強制的に観客にされてしまう。 『みーんなー! 元気かなー!』 『会えてうれしいわー!』 スピーカーから爆音のセリフが流れてきた。本当に嬉しいなら、もっと感情のこもった声で言ってほしい。 ラックとシマーは2体とも茶色なので、統一感はある。でも、二足歩行で、青いオーバーオールを着たサルと赤いワンピースを着たリスに、少女マンガのキラキラした目を貼り付けたようなデザインだ。 もう見慣れていると思っていたが、久しぶりにきぐるみを見ても、やっぱり微妙に可愛くない。 泣いている子供もいるくらいだ。 世界中に顔と名前を知られて愛されるネズミだっているのに、世の中は不公平だ。 ラックとシマーは別に、昔からいたのではなくて、ある時、急に、当たり前みたいに現れた。テレビや新聞で、ゆるいキャラクターが話題になった頃だった気がする。
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